めずらしいこともあるものだ。
向こうから、しろボン王子がやってくるのに気がついた。彼とは同じ年のころだったが、立場の違いか性格の不一致か、お互い話すことはあまりなかった。こうして城内ですれ違っても、軽く会釈をするのみだった。
それが、急に手を挙げ寄ってくるので、くろボンも足を止めた。
「くろボン隊長」
はい、とくろボンが、よそよそしく返事をする。
「鳥ロンって、何を食べるか知ってますか?」
はい? とくろボンが、裏返った声を出す。
いきなり何を言い出すのだ、こいつは。仮にも王子に向かって、失礼な口をききそうになった。何故この王子は、親しくもなく、また詳しくもなさそうな自分に、そんなことを尋ねるのか。
怪訝な表情を出したまま、くろボンは正直に返した。
「詳しくはないので、わかりません。一口に鳥ロンとおっしゃられても、すずめロン、カラスロンなど、いろいろな種類がありますし」
何故そんなことを聞くのか。ちょっとした興味が、くろボンに次の質問をさせた。
「一体どんな鳥なんです?」
「それはね……」
「フェニフェニフェー!」
くろボンは目の前の光景に、目をしばたたいた。
ちょっと着いてきて、としろボンに言われ、案内されたのは彼の自室だった。ただっぴろい空間に、ぽつぽつと調度品が置かれた部屋。傍目にも上等と思われる天蓋付きのベッドの上に、籐で編まれたカゴが置かれていた。その中で丸まる、青い、ふさふさした生き物。こちらを認めるや否や、手、もとい羽を振り上げて、鳴き声をあげたのである。これが件の鳥ロンらしい。
くろボンも、こんな鳥は初めて見た。空色の羽を、青藤色が縁取っている。首には植物のへたのような、すみれ色の襟。とさかと思しき体毛で、目は隠れ、顔は見えない。何より、この甲高い鳴き声。
「……この鳥ロンは、どうされたのですか?」
「この前、窓から顔出してたら、いきなり落ちてきたんです」
王子は鳥ロンに寄り、その体を撫でる。見れば、隠れていたもう片方の羽は、布がぐるぐると巻きつけられているようだ。
「怪我をしていたようで。手当てはしたんですけど、まだ飛べないようなんです」
なるほど。それで、何を食べるか聞いてきたわけか。怪我をした鳥を助けるとは、なんとまあおせっかい──慈悲深い王子様だ。
しかし、くろボンにも、こんなビーダロンには覚えがない。鳥ロンの一種であることは間違いなさそうなので、虫や草の根でも食べそうなものだが。
進言してみたが、しろボンは頭を振る。
「それが、全然食べなくって」
見た目にもめずらしいビーダロンだから、その生態も、食べるものも特殊なのかもしれない。だとして、くろボンには他に思いつかない。少なくとも、ここで答えられるものではなかった。
「わかりました。知り合いにも聞いてみましょう」
「ありがとう!」
しろボンは向き直り、こちらの手をしっかと握る。
他人、もとい他鳥のために、そんなに一生懸命になれるとは。なんだか面倒なことを引き受けてしまったな、とくろボンは思ったが、このめずらしいビーダロンへ、興味がひかれることも事実だった。
それから、仕事の合間に、鳥ロンについて調べてみることにした。鳥ロンを飼っている兵士や、野鳥観察が趣味という兵士がいたので、それとなく聞いてみたが、やはり皆、「虫ロン」「木の実」「豆」「葉っぱ」といったものだった。「チョコ」は駄目。「玉ねぎ」も駄目。
しかも尋ねると、鳥ロンを飼うのかと詮索されたり、愛鳥の自慢話を延々と聞かされたりで、すっかり辟易してしまった。おかげで鳥ロンについて、妙に詳しくなってしまった。
だというのに、あの鳥ロンについては、まったくと言っていいほどわからなかった。特徴を伝えると、「見たこともありません」とすげなく返されるばかりだ。めずらしい鳥ロンであるから、怪我をしていたことを考えると、密猟者などの輩に狙われていた可能性もある。あまり話を広めるのは憚られたので、それ以上聞くのを止めた。
今日は図書館で、鳥獣図鑑を眺めていた。本当は別の用事で来たのだが、このごろ城周りを騒がせているのは、どこそこで誰々が迷子になったとか、厨房をネズミロンに荒らされているとか、特に出張る必要もないことばかりだったので、用事が済んだ今、悠々と本を読んでいた。
メジロロン、うぐいすロン、カナリアロン、ムクドリ、鳩。ページをめくるが、やはりあの青い鳥ロンは出てこない。そもそも何目何科の鳥なのか、見当もつかない。仕方なく本を閉じ、棚に戻す。
──青い鳥ロン、といったら、やはりあれか。
児童文学コーナーに足を運ぶ。子供向けに書かれた色とりどりの本の中に、黒くむっつりとした自分がいるのは、いかにも不釣り合いに思えたが、つとめて平静を装った。他に誰もいないのが幸いだった。
本の列を指でたどり、タイトルを探す。あった。「しあわせの青い鳥ロン」。
話には聞いたことがあるが、どういう物語なのかは、正直なところよく知らない。パラパラとめくり、軽く内容を目で追う。
妖精に乞われ、病気を治すという、青い鳥ロンを探す旅。死んだ祖父母に会いに行ったり、秘密を閉じ込めておく夜の城を訪ねたり、森で裁かれたり、しあわせというものに満ち足りた館を訪れたり、将来産まれてくる子供たちの国へ足を踏み入れたり。
鳥ロンは、と文字の中に探すが、捕まえても色が変わってしまったり、死んでしまったり、捕まえられなかったり、しまいには逃げられたりする。
冒険譚が話の大筋で、題名にもなっている肝心の「青い鳥ロン」は、ほんの少ししか出てこない。あとがきの前までたどり、あきらめて本を閉じた。何を食べるのか、結局わからない。生態すらはっきりしない。
医者にでも見せるか。ビーダロン専門の医者に。王子の素人手当ても不安ではある。しかし、上手くいくかどうか。何しろこれだけ調べてわからないのだ、めずらしさ故に、研究材料として連れていかれるかもしれない。それは、おそらく王子の望むところではないだろう。
信頼のおける、医者か研究者はいなかっただろうか。しばし逡巡するが、なんだかおかしくなってきて、自嘲的な笑みが漏れた。
王子の気まぐれに付き合ってやるなど、どれだけ暇なのか。
本で調べるのは諦めて、ひとまず様子を見るために、王子の部屋へ伺うことにした。近づくにつれ、ドタンバタンと、何やら不穏な音がする。
「こらー!」
扉越しに聞こえるしろボンの声は、怒りこそすれ、切羽詰まっている感じではなさそうだ。指を鉤型に曲げ、ドアをたたく。
「王子、よろしいですか」
「待て、逃がさないぞ!!」
何してるんだ。ノックなど聞いちゃいない。
ノブに手をかけると、するっと扉が開いたので、無作法を承知でそのまま押し入った。
部屋の中では、気ままに飛び回る鳥ロンと、それを追いかけるしろボンがいた。まだ怪我は完治してないようで、鳥ロンは、まるで滑空するかの如く、ふらふらと高度を下げながら飛んでいる。それでも、飛べるようになっただけ、元気になったものだ。
感心すると同時に、部屋の惨状に、口を閉じる。強盗でも入ったのか、というくらい、物が散らかって、ひっちゃかめっちゃかになっていた。ずり落ちたカーテン、荒らされたベッド、倒れた椅子。
窓は開いていないし割れていない。あと入り口といえばこのドアしかないから、侵入者ではなさそうだ。まあまず、自分たちでやったのだろう。
「王子」
話など聞いてくれそうにもないので、追いかけるしろボンの間に、割って入る。
「あ、くろボン隊長、いたんだ」
しろボンがはたと足を止めた。
「何があったんです?」
「聞いてよ、聞いてくださいよ。カゼ丸ったら……俺のとっておきのポテチと、漫画をベッドの下から引っ張りだして、勝手に飲み食いしてやがったんですよ。せっかく限定の柚子こしょう味だったのに。しかも、ポテチ食べた手で漫画触るから、油染みになっちゃって」
まさか。この鳥ロンが。振り仰ぐと、しろボンに向かって、「あっかんべー」のような仕草をしている。
「このやろ!」
立ちすくむくろボンをよそに、二人、もとい一人と一羽は、再び追いかけっこを始める。
もう、何からツッコめばいいのかわからない。ポテトチップスを隠し持っていたとは、いささか意地汚い気がするし、ベッドの下に隠すとは、安直と言わざるを得ない。鳥ロンだってすぐに見つけてしまうというもの。バタバタと追い回すさまは、とても王子の振る舞いとは思えない。
しろボンに呆れると同時に、鳥ロンにも驚かされる。
ポテトチップスを食べて大丈夫なのか。油のかたまりだぞ。しかも柚子こしょうとは。問題ないのか。さらに、漫画を読んだというが、そこまでの知能を持っているのか。しろボンを挑発までして。ますますわからないビーダロンだ。
「名前をつけたんですか?」
言いたいことは山ほどあったが、ひとまず、一番簡単そうな質問から聞いてみる。
「うん、ええ」
しろボンは、こちらに目もくれないまま返事をした。机に降り立った鳥ロンを捕らえようとして逃げられ、床に立った鳥ロンへ飛びかかったがすかし、飛んでいる鳥ロンを掴もうとして抜け出される。
散々鬼ごっこをしたからなのか、鳥ロンは、以前入っていたカゴの中に、すっぽりを身を収めた。その様子を見て、しろボンは、ちぇっ、っと拗ねるように頬をふくらませた。「こうなったら手出し出来ないじゃんか」鳥ロンは、すやすや寝息を立てていた。狸ロン寝入りかもしれないが。
「今夜、お時間ありますか?」
一部始終を眺めていたくろボンは、しろボンに問いかけた。
「え?」
「お付き合いしていただきたいのですが」
***
くろボンがしろボンをともなってやってきたのは、夜の厨房だった。
皆が寝る支度を始める時分。侍女たちはとうに下がり、辺りは真っ暗。しろボンは明かりをつけたがったが、それでは見咎められるかもしれない。手にした小さなランプだけが、唯一の光を放っていた。
石畳に、二人の影が落ちる。普段見知っている場所でも、なんだかおどろおどろしいようで、しろボンが身をすくめていた。くろボンは、夜勤で慣れているので、特別どうとは思っていなかった。
「くろボン隊長、なんなんですか。暗いし、なんだか気味悪いし。よい子はもう寝る時間ですよ」
「あいにく悪い子がいるもので」
くろボンはにべもなく言い返した。
ランプで中を照らすと、しんと静まりかえっていた。裏へ続く勝手口、水を溜めた壺、酒の入った樽。洗い場、コンロ、冷蔵庫、作業台。昼間の活気はなりをひそめ、不気味に光を照り返すばかりだ。「なーんか出てきそうだなあ……」と、すっかりくろボンの後ろに隠れたしろボンがつぶやく。
「一体ここで、何をするつもりなんですか? まさか、デートというわけでも……」
「しっ!」
くろボンが指を立てた。そろそろと、辺りを見まわす。
「別に、何も」
しろボンが言いかけたときだ。
ガタッ! と音がした。
「ひッ!」
おばけ? オバケ!
しろボンはパニックになりながら、しかし恐怖でまともに声が出ないようで、ただ右往左往する。
「騒ぐようでしたら、ここで待っていてください」
手でしろボンを押しとどめ、くろボンは一人厨房の中へ踏みこむ。
「待って、おいてかないで!」
ほとんど空気のような声をあげて、しろボンが後からついてきた。
絶え間なく音がする。ランプを作業台の下に置き、正面を照らさないようにする。暗がりに慣れてない目は、物の輪郭しか見えない。物音の方へ、ゆっくりと、忍びながら歩を進める。
いた。あいつだ。
くろボンはランプをひっ掴み、前方へ掲げた。
「フェ!?」「カゼ丸!?」
鳥ロンとしろボンが、同時に声をあげた。
ランプの光に炙り出されたのは、紛れもない「カゼ丸」だった。手にはショートケーキ、みかんやりんご、とうきび、塩漬けの魚や肉まである。くちばし周りに生クリームまで携えているものだから、犯人はこの鳥ロン以外に疑いようもない。
二人に気づいて、鳥ロンは逃げようとする。くろボンが駆けだしたのを、避けた先へ、しろボンが待ち構えていた。飛びかかって、むんずと足を掴む。
「こら、暴れるなって」
鳥ロンが、しろボンの手から逃れようとじたばたする。「しかし、なんだってここにカゼ丸が?」
「やはり」
くろボンは言葉を漏らした。
「おかしいと思っていました。こちらがまともに食事を与えられていないのに、こんなに肥えて、飛び回っているのですから。ちょうどネズミロンの話があったものですから、まさかとは思ったのです。あるいは、王子が盗み出しているのかとも思いましたが」
「オレはそんなことしませんよ!」
ポテトチップスを隠していたのに? とひと睨みすると、「う」と言葉を詰まらせ、カエルロンのように大人しくなる。
「それで確かめに来てみれば、これです。もしこいつが現れなければ、王子の仕業として、問い詰めるつもりでおりました」
くろボンもしろボンも、暴れまわる鳥ロンを見やる。つまり、厨房を荒らす不届き者は、ネズミロンなどではなくこの鳥ロンだったというわけだ。
「助けるということは、責任がともないます。面倒を見ると決めたのなら、周囲に迷惑を掛けないように。よろしいですね」
くろボンに諭され、はい、としろボンは小さく頷いた。部屋へ引き揚げるさなか、「こら、おなかが空いたら、ちゃんとオレに言えって」と、鳥ロンに説教をしていた。
***
厨房でしこたま盗み食いしていたので、念のため、ビーダロンの専門医に診てもらったが、異常は見受けられなかった。あまりの物めずらしさに、あれやこれやと事細かに調べられたものだから、間違いない。別れを惜しむ医者を振りほどくのに苦労した。
その後、専門家も見つかった。マニアックなビーダロン図鑑に、この青い鳥ロンが載っていたのだ。彼女が言うには、この青い鳥ロンは「フェニックスン」と呼ばれるようで、結論から言えば、「人間が食べられるものは、何でも食べられる」ということだった。
とはいえ、人間だろうが、ポテチにケーキを食い散らかしていたのでは、体に悪い。しろボンが気を配りながら、果物、野菜、肉を、バランスよく分け与えた。ときどきお菓子も食べていたみたいだが、さしたる量ではないので、気にしないことにする。
鳥ロンは、すっかり元気になったようだ。
***
「くろボン隊長」
またもやしろボンと、城の廊下ですれ違う。事件は解決したのだし、もう話しかけられることもないと思っていたのだが、あの時のように声をかけられて、足を止めた。
「今から、時間ありますか?」
「ええ、まあ」
なんだろうか。くろボンは思わず頷く。
「付き合ってほしいんですけど」
いつぞや、しろボンを夜の厨房に呼び出したときと、同じようなセリフを言う。
付き従って着いたのは、やはり王子の部屋だった。扉を開けると、あの青い鳥ロン──カゼ丸と言ったか、カゴの中で身じろぎした。どうやら昼寝をしていたらしい。扉の音で、目が覚めたようだ。
「フェニフェー!」
カゼ丸は翼を大きく広げて出迎える。包帯はきれいに取れていた。
よしよし、としろボンはカゼ丸を撫でると、脇机に置いてあったハンカチ包みを手に取り、風呂敷を背負わせるように、カゼ丸の首にくくり付けた。そのままカゴを持って立ち上がり、窓際まで連れていく。錠を下ろして、窓を開けた。
「隊長にもお世話になったから、一緒にいた方がいいかと思って」
「……逃がすのですか?」
名前まで付けたのに。
しろボンは、うんと頷くと、打ち水をするみたいに、カゴをぶんっと振った。カゼ丸が放り出され、宙で羽ばたく。荒っぽいやり方に、文句を言いたそうにしている。
「いいだろ。飛べるってことは、元気になった証拠だ。オレのおかげだろ」
しろボンにはカゼ丸の言葉がわかるようで、この時でさえ、言い争いをしている。
「さあ、どこにでも行ってしまえ」
カゼ丸は、しろボンとくろボンを一瞥すると、ぷいとそっぽを向いて、飛び立っていった。昼前の、霞がかったきれいな空。どんどん小さくなって、姿が終えなくなる。それを目で追っていたしろボンは、どこかさびしげな表情をしていた。
「何故逃がしたのですか?」
つい、疑問が口を突いて出た。
傍目には、悪友のような、兄弟のような、仲の良いように見えたのに。いつかは別れるのだとしても、もうしばらく共にいるのかと思っていた。そんな顔までして、何故逃がしたのだろう。
「アイツにはアイツの、帰るところがあるからね」
しろボンは、小さく苦笑いした。「それに──」
「それに?」
「しあわせというものは、目に見えたり、見えなかったりする。探せばいくらでもいるし、いつでも捕まえられる」
そう言ってカゼ丸の飛び立った虚空を見つめた。くろボンも目で追う。何のことか、考えているうちに、ああ、あの本の話か、と合点がいく。
「だからいいんだよ、これで」
これからしばらく、厨房は荒らされることはないし、ケンカの声も聞くことはない。大人しく、ちょっと退屈だけれど、平和な日々がやってくる。
と、思っていた。
「で」
しろボンを向かいに座らせて、くろボンも椅子に腰を下ろした。しろボンは見るからにしょげかえり、肩を落としている。
「その「しあわせの青い鳥ロン」を探しに行って、迷子になったというわけですか」
「はい……」
しろボンは力なく頷いた。
にわかに城内がざわついていたので、何事かと思っていたが、尋ねれば、王子の姿が数刻ほど見えないという。王子が失踪するという一大事、守備隊の総力を持って当たらねばならないが、かといって、大々的に触れまわるわけにもいかない。それを知った悪辣な輩に、御身が狙われる可能性もあるからだ。内密に、しかし迅速に、ことに当たらなければならない。
当のしろボンは、隙をついて抜け出したはいいものの、箱入り娘ならぬ箱入り息子、気ままに走り回っていたら、いつの間にか、知らない路地へ迷い込んでいたそうだ。ぐるぐると、あっちへこっちへ行ったり来たり。そのうちカフェに出て、一服したのち、店主に道を聞き、反対方向へ出て、公園に屋台があったので、道を聞くがてらフランクフルトを買い、のんびり食べ歩いているところを、パトロール中の兵士たちが見つけた。
まったく、呆れて物が言えない。雷を落とすのは父王に任せるとして、くろボンは、守備隊長として、ことの経緯をあらためなければならなかった。
「それで、青い鳥ロンは見つかったのですか」
「はい」
しろボンが、満足そうに頷いたので、おや、と思う。
「自由に歩き回れるしあわせ、おいしいものを食べられるしあわせ、探しに来てくれる人がいるしあわせ、帰る家があるしあわせ」
しろボンは太陽のようにカラッと笑う。
俺は仕事が増えただけで、何も喜ばしくないけどな。くろボンは心の内でひとりごちたが、この笑顔が目の前にあるのも、一つの『しあわせ』なのかもしれないと、ぼんやりと思った。
差し替える必要はないなと思い直した
