紋章編くろの忠誠

実際くろは『王子』に忠誠を誓っているのではないのですよね。
王子としては認めていないけど、しろ個人としては認めている。

自分が認めた存在であるしろを守る立場にあるのならば果たすまで、それが結果的に忠誠と呼ばれているだけのこと。

出会った頃のくろとしろの関係ですが。
くろとしろは歳も一緒だろうけど、くろにとってしろは主君であります。
が、歳が近いが為に、どうしても比べてしまう。
自分は親衛隊長として役目を果たそうとしているのに、自分より能力が劣っているようにしか思えないこの主君に尽くすのかと。

形式上の忠誠を誓っていたとして、内心はくろはしろを見下していたと思われます。
もっともくろが異例の出世であるので、この不均等はくろによるものなのですが。

でもってしろにとってくろは臣下ですが、歳が一緒で立場的にも目下、しろ自身もそこそこに幼く、大人ばかりの地球宮でくろの存在は貴重だった訳です。
なのでしろはくろに対して友人のように接する訳ですが、甘んじてしろに忠誠を誓う立場のくろとしてはなかなかに堪えがたいことだったようです。

とはいえくろにとっても同年代の友人がいなかった訳ですから、しろの存在は『守備隊長』としてでなく『くろボン』としていることが出来る貴重な機会でもあったのです。
同年代に限定せずとも友人がいなかった可能性もありますが

そして本編内で紆余曲折あって、やっぱり王子としてはへっぽこぴーだとしてしろボンとしては認めるようになる訳です。
それから前回のくろの葛藤が始まります。

友人というならしろよりみどりの方が近いです。
ただ葛藤の一因でもありまして、途中から地球宮で同僚となるのですが、周りからの信頼も厚く仕事の能力も高く、かといって本人に偉ぶったところはなく、くろも認めざるを得なかったのです。
自分が留守の間しっかり仕事もこなしていたし、何よりしろが懐いているので、劣等感を抱くと同時に自分の必要性について懐疑的になってしまいます。

途中から入ってきたみどりが何故こんなに信頼されているのか。
自分とみどりの何が違うのだろうと考えた時、自分は裏切ったからなのだと。

正解は『経験』で、くろは下積み時代が皆無だった為の違いなのですが、しろを認めた今となっては罪悪感だけが募り、他の原因が思い当たらないほど追いつめられます。

しかしながら、くろが物理的に絶望的危機に追いやられた時に、ようやっと悟るのです。
必要とされることが存在意義なのではなく、必要とすることが存在意義だと。
たとえ自分が隊長でないとして、忠誠が偽りだとして、弱かったとして、自分が守りたいと思うならばそこに存在理由はあると。『我思う、故に我あり』ですね。
自分の認めた対象を、どういう理由であれ自分が守ることができるのならば、これほど面白いことはないと。ましてその相手が自分を『隊長』と呼んでくれるのです。
こうなった時のくろは手がつけられません。

紋章編くろは起伏が激しいけどどん底を乗り越えた後は歴代最強になるんじゃないでしょうか。背負っているものが大きいですもんね。

しかしそこまでたどり着いたとしても、あくまでくろにとっては主君以外の何物にもならないのです。
しろにとってくろは臣下である以上に友人であるとしても、そういう接し方を求められて一時的に友人を振る舞うとしても。
良き友人ではないけれど、良き臣下であろうと思っているのです。
なんだかんだで幸せなのです。

ところでしろはあくまで『王位継承者』なので、直接の指揮権限はゴールデンボン王にあります。
くろはゴールデンボン王を王様として認めているし、また忠誠も誓っています。
ただ彼が尽くすのはしろボン王子ただ一人なのです。