あかボンの手紙
こんにちは。あかボンです。お元気ですか?
もちろん、しろボンなら元気だって思っています。
まずは、この度の戴冠式、誠におめでとうございます。なんて、改まって書くとなんだかおかしいわね。
でも本当に、しろボンが王様になるんだなと思うと、なんだかしみじみしちゃいます。
振り返ってみると、しろボンと初めて会ったのは牢屋の中だったわね。しかも、しろボンはトイレに座ってたし。ちょっと、出会いとしてはロマンスに欠けるかしら。
命を狙われた王子と、反乱軍の女工作員! って、設定だけで映画ができそうだわ。最後には恋に落ちたりね。
なんて、私としろボンでそんなことがあったら笑っちゃうわ。無いとは言いけれないけれど。
というのも、お父様が最近お見合いってうるさいのよ。一応これでも、火星大統領の娘だものね。仕方がないけれど、私はまだまだそんな気無いんだから!
しろボンはそんなこと無い? 裕福な家、って羨ましがられるけれど、それだけ苦労もあるって、なかなかわかってもらえないのよね。ゴールデン王(これからは前国王になるのだけれど。位を捨てる、ってなかなかできないわよね。それも王様らしいけど。)に限っては、そんなことも無いか。
何があったって、私たちは友達よ。将来どうなるかわからないけれど、それでも友達には変わりないわ。
しろボンにとっても、そうであったら嬉しいな。
そう、今度戴冠式とは別に、私たちでお祝いしようって話が出てるの。私たち、っていうのはもちろんいつもの仲間よ。みんな会えるのって、いつくらいになるかしら。楽しみだわ。
でも、くろボンに連絡が取れないのよ。案内は出してるんだけど、届いてないのかしら?
こんな時くらい、愛想よくしてくれたっていいわよね! まったくもう。けれど、愛想のいいくろボンも、それはそれで怖いかしら……。
ともあれ、きちんと決まったらお知らせします。それまでお楽しみにね!
きいろボンの独白
まったくなんや! 腹の立つ。ワイを誰だと思ってんねん!
宇宙を救ったヒーロー、きいろボンサマやぞ!
おたくらの王子サマとはあっつい友情で結ばれとんのや! それを門前払いって、まったく何考えてんねん!
……ああ、そうか。もうアイツは王子では無くなるんやな。
そう考えると、ちょっと寂しい気もすんなあ。
今度のタイカンシキってやつで城下もごったがえしとる。おかげでワイの商売も大繁盛なんやけど。
今気づいたんやが、町の壁が真っ白くなってんのな。しろボンだけに、ってか。お祝いムード一色やな。文字通りな。ええやん、ワイも祭大好きやし。
けどなんやろな、なんだか寂しいねん。
つまりあれやろ? 祭のみこしがしろボンってことやろ。
しろボンがみこしっていうにはちょっと頼りないわなあ。ワイの中では抹茶にワサビ仕込んだり、わざとよく振ったソーダ渡したり、そーんなくっだらないことした思い出しかあらへん。
みこしそのものゆーより、みこしに登って降りられなくなったネコちゃんみたいな感じやわ。ほら、なんとかとなんとかは高いところが好きって言うしな。
まあアイツが何になろうと、ワイとしろボンはマブダチやし。これは変わりあらへん。
それだけにちょっと心配やなあ。いっぺん顔見とこか思うたんやけど。やっぱり忙しいんやろか。
それにしても、まったくあの頭でっかち門番め。思い出すだけでムカムカするわ。怪しい奴め! ってワイを追っかけてきよった。こんなスーパーハンサム捕まえといて、何が怪しいねん!
しかめっ面してるもんだから、和ませよ思て、小噺聞かせたんが間違いやったわ。あー損した。
ホンマ、親衛隊いうんはカタブツの集まりなんか? 誰かさん思い出すわー。
ま、タイカンシキとやらになればアイツの顔も見れるやろ。
ワイも忙しいけど絶対駆けつけるでー!
ええものもあるさかい、楽しみにしててや!
あおボンの日記
しばらくぶりの地球ですが、毎日あっという間に過ぎていきます。なにしろ、戴冠式まで日がありません。懐かしいなあ、なんて思っている時間もありません。
最近気になることといえば、しばらくしろボンさんを見ていないことです。ちょっと心配です。
この前ちょっと見た時には、ボクが声をかけても全然気づきませんでした。下を向きながら、お経のように何かぶつぶつつぶやいて、まるで明日ノストラボンの大予言が来る、みたいな、この世の終わり三歩手前みたいな顔をしてました。きっとあれは、戴冠式の演説の文章だと思います。
もう一度声をかけたら、気づいてくれましたけど、「やあ、あおボン」なんて、青白い顔して言うもんだから、どっちがあおボンかわからないです。あれじゃあおじろボンです。
きっとしろボンさんはしろボンさんで、王様としてやることを頑張っているんだと思います。なんだか感慨深いなあ。
地球ではいっつも、勉強だ武道だなんだかんだと詰め込まれて、嫌になって逃げだしてきたしろボンさんをかくまってばかりでしたから。それがないと、ちょっと物足りないというか……。いえ、さぼらないっていうのはいいことなんですけどね。
ボクも手助けしてあげたいんですけど、こっちはこっちで忙しくて、なかなか会いに行くことができません。
こういう時、誰か助けてあげられる人がいればいいんですけど……。
親衛隊もかなり忙しいみたいです。組織としてはうまく回ってますが、何せエースパイロットが抜けましたから。今度の実機演技は、構成にかなり苦心しているみたいです。
かくいうボクらは、プロジェクションマッピングをやることにさせました。
気を抜くと、グラングレイボン博士がとんでもない改造をしてくるので、デバッグに困っています。
最初は人間大砲をやるとか言ってましたが、そうならなくてよかったです。とはいえ、グランパのことですから、いつ何を仕込んでくるかわかりません。常に目を光らせておかなくては。
もしかしたら、ボクの疲れている原因ってグランパのせいなんじゃ……。
なんか後ろで爆発音がしました。今日も徹夜の予感がします。
しろボンさんの為ですから、頑張りますけど。誰か差し入れくれないかな……。
みずいろボンのメッセンジャー
ねえ、しろボン、起きてるの? というか生きてる?
それならぼくのメッセ返事くれたっていいじゃないか!
だいたい、これくらいでなにへこたれてんだよ。王子サマから王サマに呼び方が変わるだけじゃないか!
そんなのぼくには全然関係ないし。
……まあ、本当に倒れても困るから、今回は特別に許してあげるけど。いいね、特別だよ!
そのかわり、ちゃんと最後まで読むこと! いいね!
話は聞いてると思うけど、祝賀記念パーティー、ぼくんとこでやることに決めたから。
ぼくんちからちょっと離れた沢のところ。といっても、水星なんてほとんどぼくんちだけどね。
避暑地だからさあ、ほとんど別荘ばっかりなんだけど、そんなかでも更になんも無いとこ。周りはぐるっと山で、上から砂糖振ったみたいに、まだ雪が残ってる。で、その囲まれた中に森があって、ワンホールのケーキを一人分カットしたくらいの大きさで、上から湧き水が流れてくるとこがあるの。高さはくるぶしとひざの真ん中あたりかな。魚もいるから釣りも出来るよ。どうだ、いいとこだろ。
その代わり、使用人はいないからね。ぼくら七人、水入らずさ。水星だけどね。
のどが渇いた! って言ったって、誰もジュースとか持ってこないからね。もっともジュースなんかより、沢の水の方が断然おいしいけど。宇宙一の名水さ。
その方が気を遣わなくて君もいいだろ。
なんというか、君が王サマっていうのがまだ信じられないんだよねえ。王子サマって感じもしないのにさ。
いつだっけ、地球宮でちゃんとした集まりがあったろ。その時の君は本当に王子サマっぽくて、カッコいいなって思ったんだよ。ぼくの次くらいに。
けれど、ぼくたちの前ではふざけたりするし。忘れてないよ、ぼくのジュース飲んじゃったこと。王子サマがそんなことする?
どっちが本当の君なんだろ。まあ、どっちだっていいけどね。
ジュースは貸しだからね。 飲んじゃったものは仕方ないし。
少しでも悪かったなあ、と思ったら、パーティーに来ること! 約束だからね!
みどりボンの回顧
驚いた。戴冠式の前に、地球へ前乗りしていたら、偶然ゴールデンボン王に出くわしたんだから。
職業病と言うやつなのかな。兵士の配置とか、城壁の具合とか、見て回っていたら、裏手の堀のあたりから、黒い布をまとった人物が、にゅっと出てきたよ。最初、非現実的だけと、物の怪の類かと思ってびっくりした。よくよく見たら、陛下じゃないか。
思わず声をあげそうになったが、人差し指を立てて、しぃって、黙ってろって仕草をした。「わしはな、おつかいなんじゃ」と言っていた。おつかい? 国王が? あ、いや、じき先王になるのか……と考えていたら、あっという間にいなくなって。
なんだか笑ってしまったよ。陛下には、何度かお目見えしたことがあるが、こんなことをするお方だったとは。
そう考えると、やはり、しろボンと陛下は似ているな。
最初、しろボンが王子だって聞かされた時は、びっくりしたもんだ。
もちろん、名前は知っていたさ。けれど、実際会ってみるとな。気さくで、好奇心旺盛で、ちょっとおっちょこちょいなところとか、想像と違ったものだから。もっと物静かで、大人しくて、近づきがたい人なのかと思っていたよ。
当日は、あのバルコニーから、しろボンが出てくるんだな。国王として。なんだか感慨深いよ。
しばらくそうしていたのだけど、不意に、見知った顔とすれ違って。「まったく、陛下はどこへ行かれたのだ」って。オレンジボン老師だった。そういえば、昔は地球にいたんだったな。
目が合って、陛下の行き先を聞かれたので、嘘をつくわけにもいかず、「黒い河童が塗り壁から出てきました」と答えたら、どこか先に行ってしまった。
その背中を見て、ああ、しろボンとあいつにも、ああいうころがあったのかなって。
そもそも、あいつは来るんだろうか。
陛下は帰り際にまた出くわして、地球堂の袋を持ってた。口止め料として、一つ渡されたよ。もうすでにしゃべってしまったんだがなあ。
中身は、ショートケーキとクリームソーダだった。何故これを?
ラストまで書き切ったはずなのにデータが残ってなかった(残りは加筆しました)
